蛙と蝸牛

本と映画の感想

背高泡立草  港たち


背高泡立草  港たち(古川真人 集英社

 

長崎五島の離島における吉川一族の物語。

私小説みたいな内容で、登場人物の一人 吉川稔が著者本人にあたるようだ。

 

「背高泡立草」(芥川賞受賞作)の方では、今は誰も住んでいない島の納屋の草刈りに、(吉川家の姉妹と家族が)福岡からわざわざ出かける話。

戦後の引き揚げ時期の遭難船の話とか北海道での捕鯨の話などが挿入される。

 

「港たち」は短編集で、「背高泡立草」の主役?が現役世代?の美穂や加代子だったのに対して、本作では主に美穂たちの親世代の視点で描かれる。

敬子は、長年、島でなんでも屋を営んでおり、90歳を超えた今も店番をする。その姉の多津子は今は福岡に住む。足の具合が悪いが、島に帰った際には稔と近くの渚(シャンシャンパナ)に出かけたりする。

 

両方の作品ともに、文体というか語り口が独特で、五島の方言がそのまま記述されたり、改行とかの目印なしに突然語り手や話題が変わる。

「あれ、なんかいつの間にか話変わっている?」みたいな感じで、ぼんやりと読んでいると筋(そもそもストーリーがあるのか?という問題もあるが)を追えなくなってしまう。ただ、それもおそらく著者の狙いとするところで、筋書きにとらわれず流されるように読んでいるうち、夢の中で彷徨っているような錯覚に陥る。今はやり?の南米の作家の幻想小説の読後感にも似たものがあった。

そして、読みにくさが決して不快ではないのも(人によるかもしれないが)いいところだ。