蛙と蝸牛

本と映画の感想

アメリカが壊れる!(野口悠紀雄 幻冬舎新書)

アメリカが壊れる!(野口悠紀雄 幻冬舎新書)

 

トランプ政権の関税政策はアメリカ自身や世界全体の経済に悪影響を与えることを論じた内容。自由貿易が阻害されるから、といったようなあいまいな理由でなく、関税政策がおよぼす影響を、基本的な所から、やさしく、論理的に教示する。

 

アップルのようなファブレス企業にとっては、その製品の付加価値の大半はアメリカでの設計から生まれているのだが、製品としてアメリカに輸入されると統計上は全付加価値が(アメリカの)輸入として計上されてしまう。こうした企業が増えたことがアメリカの貿易赤字の大きな要因であるものの、付加価値の源泉を反映できるような統計は現状では困難である、という問題意識が興味深かった。

 

このような製品に関税をかけると実質的な負担はアメリカ国内のファブレス企業に及んでしまう。こうした事態は国際貿易論が想定していなかったものだ、とする。(以下、引用)

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関税をかければその負担が自国の消費者に及ぶのは、これまでもあったことだ。この問題は今回も存在する。

それに対して、生産者の負担に関して見れば、これまでは関税の賦課によって負担するのは、海外の生産者であった。ところがiPhoneや高性能半導体の場合には、生産者として海外の組み立て企業や部品製造企業が存在するだけでなく、基本的な設計者が国内に存在するのである。そして、アメリカが輸入品に関税をかければ、その一部は国内の設計者も負うことになる。これは、これまでにはなかった事態だ。ファブレス製造業の登場によって、初めて生じた問題だ。

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トランプ大統領は、まずは高めのタマを投げて交渉し落とし所をさぐるという交渉の手法を世界で最も強力な国の指導者として行使する。交渉のためなら、真実でない(と自覚している)ことでも公の場で述べる。見ている方からすると、「またブラフだろ」とは思うものの、時々ホントになったりするので始末が悪い。

誰も彼をコントロールできないが、唯一、マーケットの声には耳を傾けるように見える。だからTACOトレードが成立するわけだが、あまりに繰り返されると市場参加者も慣れてきて「またTACOだろう」と彼の極端なアイディアに反応しなくなってしまうのが怖い。「マーケットは平穏だ。だからこのままこの政策を続けていいんだ」と思ってしまいそうだから・・・