蛙と蝸牛

本と映画の感想

2012-01-01から1年間の記事一覧

デッドエンドの思い出

デッドエンドの思い出 (吉本ばなな 文芸春秋) 実は、吉本さんの著作を読むのは初めて。読んでみて人気が出る理由がよくわかった。 この本のどの短編も、語り口は穏やか、というかぼんやりとした感じだが、ストーリーの中で語られることは、幼児虐待、子供…

アニマルキングダム

アニマルキングダム 母を薬物中毒で亡くした主人公は、祖母の家に引き取られる。 祖母の家族は薬物密売やその他の非合法ビジネスに手を染めていて、祖母は彼らに君臨する女王的存在となっていた。 しかし、一家は警察に目をつけられていて、次第に追い詰めら…

なんらかの事情

なんらかの事情(岸本佐知子 筑摩書房) 「気になる部分」「ねにもつタイプ」が抜群に面白かったので、この本も(私にしては珍しく)書店で見かけてすぐ買ってすぐ読んだ。 前述の2作に比べると、幻想短編小説風のものが増えて、笑いを狙ったのが減った気が…

ルリボシカミキリの青

ルリボシカミキリの青(福岡伸一 文芸春秋) 「ルリボシ」を変換すると最初に出たのは「瑠璃星」、「カミキリ」を変換して出たのは「髪切り」だった。「瑠璃星髪切り」、うーん、なかなかいいなあ、と思った。というのは、本書とは何の関係もない話だが、本…

猫を抱いて象と泳ぐ

猫を抱いて象と泳ぐ(小川洋子 文芸春秋) もう30年くらい昔のことなので、記憶が確かではないけれど、当時、(多分)新井素子さんがエッセイで“性格が暗いことのどこが悪いのか、オタク(当時はコアなSFファンを指していた)のどこが悪いのか、友達がいな…

サイパン邀撃戦(上)

サイパン邀撃戦(上)(谷甲州 中公Cノベル) 「マリアナ機動戦」の最後でサイパンの制空圏を奪われた日本軍が、サイパンへの上陸を目指すアメリカ艦隊を捕捉したことから、後部に飛行甲板を載せた上に主砲は陸奥のそれを換装したスーパーな(「覇者の戦塵…

ヒューゴの不思議な発明

ヒューゴの不思議な発明 ヒューゴは父母を亡くして、パリの大きな駅の天井裏?に住んで、時計守り?をしている叔父にひきとられる。 父が取り組んでいたからくり人形の修復に取り組むが、叔父はまともに食事も与えてくれない。 部品集めに苦慮してエキナカの…

キツツキと雨

キツツキと雨 主人公(役所広司)は岐阜の山奥できこりをしている。 妻はすでに他界しているが、家事はそつなくこなしている。悩みはプータローの息子がなかなか落ち着かないこと。 ある日、作業場近くにゾンビ映画の撮影隊がやってくる。主人公はふとしたき…

エースは一発病

私は、プロ野球の千葉ロッテマリーンズのそこそこ熱心なファンなのですが、とりわけ成瀬投手が贔屓の選手です。 勝利数は10勝をちょっと超えるくらい、というのが多いので堂々とエースと呼ぶのは少々ためらわれますが、ここ数年はローテーションを守り続け…

マリアナ機動戦―5

マリアナ機動戦―5(谷甲州 中公Cノベル) 買ったのは約1年前だったのですが、5巻目でシリーズが終わりみたいなので、この際、1巻目から読み直してみようと思っているうち、次がでそうになってしまったので、あわててこの巻だけ読みました。 「覇者の戦…

神去なあなあ日常

神去なあなあ日常(三浦しをん 徳間文庫) 三浦さん、ジャンル分けの難しい恋愛小説の書き手というイメージだった(そういう傾向の作品は読んでないがエッセイから推測するにそんな感じかと・・・)のですが、最近は「お仕事小説」の書き手と分類?されるこ…

とまどい関ヶ原

とまどい関ヶ原(岩井三四二 PHP) 関ヶ原合戦のいろいろな局面で、主役格からは少しはずれた人たちを主人公とした短編集。 「百尺竿頭に立つ」(語り手は安国寺恵瓊)と「草の靡き」(語り手は朽木氏の家臣)、「すべては狂言」(語り手は吉川広家)の3…

印象派で「近代」を読む

印象派で「近代」を読む(中野京子 NHK出版新書) なぜ日本人は、印象派が好きか? という問いに対して著者は 「印象派以前の絵画には意味があり、その意味がわからなければ感じることさえできない。そのためには、肖像画であれば、それが誰でどんな功績…

ブラックスワン

ブラックスワン 主人公のバレリーナは、高い技術を持っていて白鳥の湖公演の主役に選出される。 彼女は母親にスポイル気味に育てられ、今でも強い影響下にあるせいか、性格的に子供っぽくて成熟していない。 演出家はむしろ抜擢して彼女を鍛えることで大人の…

異性

異性(角田光代 穂村弘 河出書房新社) 著者二人ともにファンなので店頭で見つけてすぐに買ったのだけれど、その店頭というのが大手書店のビジネス街にある大型店なのだけど、そこで売れ行きベスト10の棚の第2位だった(今年の5月頃の話)ので少し驚いた…

(日本人)

(日本人)(橘玲 幻冬舎) 日本人特有のキャラは、東洋人のキャラに西洋風なモノの見方の味付けがされたものにすぎない、日本人の本性はそういう見せかけのキャラとはかけななれた世俗性にある、というのが、本書の主題(だと思ったが、違うかも)。 多くの…

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い 9.11で父親を失った少年の回復の物語。 父親は「ブラックさん」あてのメッセージと鍵を残していた。それが意味するものを解こうと、主人公の少年はニューヨーク中の「ブラックさん」を探し始める。 少年は病的…

象の消滅/めくらやなぎと眠る女

象の消滅/めくらやなぎと眠る女(村上春樹 新潮社) 「東京奇譚集」がとてもよかったので、村上さんの短編集を読んでみた。 おしゃれでハードボイルドちっくな生活を送っている登場人物の生活にある種の“事件”が起きる。それによって主人公の人生が大きく変…

ミッションインポッシブル ゴーストプロトコル

ミッションインポッシブル ゴーストプロトコル 今回の舞台はクレムリンとドバイとインド。 お楽しみ?のトンデモ・スパイツールは、クレムリンの廊下で、守衛の兵士を大型スクリーンに投射した廊下の風景でごまかしつつ、ハントたちはスクリーンの後ろに隠れ…

極道めし

極道めし 刑務所で同じ房になった5人が、お正月に出されるおせち料理を賭けて、いままでの人生で一番うまかった食べ物にまつわる経験を話す(聞いている人の喉をごっくんといわせた数が多い人の勝ち)というゲームをする。 思い出の食事は、全員が母親か恋…

東京奇譚集

東京奇譚集(村上春樹 新潮社) 村上春樹さんは、数多くの長編ベストセラーを出していますが、短編の方が技量?としては上なのではないか、という話を聞いたことがあります。 私は長編、短編ともあまり読んだことがなかったのですが、あるアンソロジーにはい…

J・エドガー

J・エドガー 初代FBI長官エドガー・フーバーの伝記映画。 フーバーのモンスターぶりはあまり強調されず、マザコンや同性愛に苦しんだ様子など人間的な弱点を中心に描写されている。 過去と現在をいったりきたりするが、場面の切替方法に工夫(例えば過去…

転移

転移(中島梓 朝日文庫) すい臓がんが肝臓に転移した後の闘病記。 グインサーガのファンだったので、著者の逝去はとても残念だった。 まだ55歳。グインはまだまだあと100巻くらいは続きそうな展開だったのに、神様ももう少し人を選んで召してもらいた…

受験脳の作り方

受験脳の作り方(池谷裕二 新潮文庫) 「脳科学で考える効率的学習法」という副題がついているが、内容は、王道をいく学習法が回り道でも結局一番効率的、というもの。逆にそれからこそ、中身に信用がおけるものになっている。相変わらずの著者の軽快な語り…

リスク、不確実性、そして想定外

リスク、不確実性、そして想定外 (植村修一 日経プレミア) 新書は入門書であって、それを読んでもっと詳しいことが知りたければさらに専門書を読む、という位置づけではあるにしても、本書はあまりに内容が初歩的すぎるし、ただ漫然と書き散らしていて整理…

シンメトリー

シンメトリー(誉田哲也 光文社文庫) 目次を見たとき、これはもしかしてとてつもなく凝った趣向の短編集なのでは?と思ったが、左右対称になっているのは短編のタイトルだけであって、内容は、相対する2編に関連性があるわけではなかった(それとも、私が…

ツーリスト

ツーリスト アンジェリーナ・ジョリー演じる主人公はイギリスのスパイで,ギャングの大ボスの資金を持ち逃げした犯人を追っているうち、その犯人にホレてしまって姿を消していた。 この主人公がベネチアにさえない数学教師(ジョニー・デップ)を伴って現れ、…

SPACE BATTLE SHIP YAMATO

SPACE BATTLE SHIP YAMATO 原作は30年以上前の作品なので見たことがある人もだんだん少なくなってきていると思います。 私は原作アニメのかなり濃いめのファンだったので、本作はとても楽しめましたが、何の前提もなく見たら「ナニコレ?」ってなりそうな…

ステキな金縛り

ステキな金縛り えーつと、実は三谷監督の映画、今一つ面白いと思えなかったんですね。今まで。舞台はとんでもなく面白いん(と言っても今まで4回しか見たことないけど)ですけどね。 でも、本作は違いました。あまり期待せずに(DVDを)見たんですが、…

終わらざる夏

終わらざる夏(浅田次郎 集英社) 占守島モノは今までに2冊読んだことがありますが、浅田さんがテーマにしたというので、出版されたら買おうと思っていたのですが、どうも評判がイマイチだったのでためらっているうち、図書館の開架にも(予約が途絶えて)…